Buddy/Black【和訳】アフリカンアメリカンの歴史、思想、文化

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和訳初期時代
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毎度!

Macaca Percussです!

当ブログでは「アメリカ大陸の歴史とブラックミュージックの変遷、及び貧しい環境の中から這い上がってきたInnovatorsの紹介」や「洋楽歌詞のコテコテ関西弁翻訳」などの企画を中心にまとめていく音楽関連のサイトとなっております。

 

さて、今回はCompton出身のBuddy“Black ft. A$AP Ferg”を和訳してみました。

タイトル通り、アフリカンアメリカンの社会的立ち位置や文化、歴史、思想、及び宗教を題材にしたシリアスな歌詞の内容になっています。

情報量が多いですが、ブラックカルチャーを知るきっかけになれば幸いですし、改めて勉強するにはとても良い楽曲だと個人的には思います。

 

1993年生まれの彼は15歳の時にPharrell Wiliamsのレーベル兼アパレルブランドのi am OTHERと契約しました。

そこで幾ばくかの経験を積み、2018年にRCAの傘下レーベルに移って、今回紹介するシングル、Blackの入ったアルバムHarlan & Alondra(ハーラン・アンド・アロンドラ)をリリースしました。

ちなみに、このアルバムタイトルはBuddyが子供時代に過ごした町の通りの名前だそうです。

Compton, S Harlan Ave(サウス・ハーラン通り)とE Alondra Blvd(イースト・アロンドラ大通り

 

MVではVerceの順がBuddy、Buddy、Fergの流れですが、ストリーミングではBuddy、Ferg、Buddyの順です。

それでは早速聴いていきましょう!

Buddy ft. A$AP Ferg – Black (Vertical Video) [Official Video]

Prod. by Jahaan Sweet

Buddy
Buddy

[Intro]

 

Black

 

Black, black, black (Huh)

 

Black on black, black

 

Yeah, hey, okay

Buddy
Buddy

[Hook]

 

Black, black, black, black on black

俺らは黒人やさかいにな。

 

 

Black, my thoughts so black

めちゃめちゃアフリカンなアイデンティティを持ってるで。

 

 

Black, black, I’m black

そうよ、俺は黒人よ。

 

 

My skin is so black, I’m rockin’ that black on black, it’s black

俺の肌は黒い、せやから俺は同じ奴らと楽しむねん。

 

 

Black rims on these black wheels, in this black whip

黒の車に乗ってやな、黒いホイール、それにそのヘリまで黒い。

 

 

With this black bitch, I’m so black on black on black on black on

ほんで黒人の女の子と一緒に居てるんよ。

 

 

Black, black, black, black on black

黒人には黒人よ。

 

 

Black, my thoughts so black

それが俺の考えやねん。

 

 

Black, black, I’m black

俺らは黒人やねん。

 

 

My skin is so black, I’m rockin’ all black, everything is black

分かるやろ?俺らは常に同じ奴らとつるんでるねん。

 

 

Black rims on these black wheels, in this black whip

車、ホイール、その周り、全部が黒よ。

 

 

With this black bitch, I’m so black on black on black on black on

黒人の女の子と楽しむ、俺らはそんな感じよ。

Buddy
Buddy

[Verse 1]

 

Ayy (Ayy), black out the coupe

クーペから黒人が降りんで。

 

 

Hop out the roof when I run into you

あんたに出くわしたら俺は屋根から飛び降りてまうよな。

 

 

Thoughts black as the dark side of the moon

月の裏側、つまり陰になってる奴らの考え方っちゅうこっちゃ。

 

 

Won’t be no truce, won’t be no truce

争い事はごめんやで。でも熱りは冷めへんのよ。

 

 

At your funeral in an all-black suit

お前の葬式、開いたらみんなは喪服、着てくるやん?

 

 

Couple white girls rocking all-black too

白人の二人組の女の子も同じように黒いスーツを着てくるねん。

 

 

Million Man March in the all-black boots

100万人大行進ではみんな黒の靴履いてたやん。

Macaca
Macaca

Million Man Marchは1995年から行われているNOI(ネイションオブイスラム)のアフリカンアメリカンによって行われたプロテスト(抗議)のこと。[詳細は後ほど解説]

 

 

Call up the troops, call up the troops

用心棒、呼んだるさかいにちょっと待っとれ。

 

 

Punch you in the mouth, they’ll knock out your tooth

あんたの口に一発くらわしたるわ、歯、へし折ったんで。

 

 

I can tell when they not tellin’ the truth

なんで俺らが発言しとる時に限って、お前らは真実を語らへんねん。

 

 

Talkin’ that shit, nigga, what you gon’ do?

言うたれ言うたれ、あんたらは何してんねや、つってやな。

 

 

What you gon’ do? What you gon’ do?

何しとんよ、ホンマに、なあ、聞いてるか?

 

 

Back and I’m black and I’m actin’ brand new

全てにおいて陰になってるんよ、、俺らは。せやさかいに新しいことをしていかなあかんねん。

 

 

Niggas in the back like, “Oh, word”

後ろにおる仲間達も呆れかえってるで。

 

 

Diamonds all black like fuck what you heard

この世には黒色のダイヤモンドも存在してるんですよ。ホンマに、クソみたいな事ばっか言うなや。

 

 

Fuck what you heard, fuck what you heard

お前が耳にした話はでっち上げばっかりよ、そんなクソみたいな話信じたあかんで。

 

 

Spillin’ some Hennessy Black on the curb

Hennessy Black(2009年に限定販売された若者向けのヘネシー)を縁石の上に垂らしたろうや。

Macaca
Macaca

酒を垂らす行為は仲間の死に敬意を払う意思表示、いわゆる献酒の事です。

 

 

Just for the memory of the deceased

先人が残してきたモノを守るっちゅうこっちゃ。

 

 

When I black out, I awaken the beast

記憶が無くなった瞬間(アルコールに酔って)、俺は野獣と化すんよ。

 

 

What it’s gon’be? What it’s gon’ be?

なんどい、兄ちゃん、やったろかい、つってやな。

 

 

You don’t wan’ fuck with a nigga like me

俺みたいな奴と殺り合いたくないでしょ?

 

 

Bet you never seen a motherfucker so black

ほんで、こんな俺みたいな奴、なかなかお目にかかれないでしょ?

 

 

Nigga, I’m black on black on black on black on black

分からんようなら吠え続けたるわ。俺は日の当たらへんところからやって来た人間や言うとるやろがい。

Buddy
Buddy

[Hook]

 

Black, black, black, black on black

俺らは黒人やさかいにな。

 

 

Black, my thoughts so black

めちゃめちゃアフリカンなアイデンティティを持ってるで。

 

 

Black, black, I’m black

そうよ、俺は黒人よ。

 

 

My skin is so black, I’m rockin’ that black on black, it’s black

俺の肌は黒い、せやから俺は同じ奴らと楽しむねん。

 

 

Black rims on these black wheels, in this black whip

黒の車に乗ってやな、黒いホイール、それにそのヘリまで黒いがな。

 

 

With this black bitch, I’m so black on black on black on black on

ほんで黒人の女の子と一緒に居てるんよ。

 

 

Black, black, black, black on black

黒人には黒人よ。

 

 

Black, my thoughts so black

それが俺の考えやねん。

 

 

Black, black, I’m black

俺らは黒人やねん。

 

 

My skin is so black, I’m rockin’ all black, everything is black

分かるやろ?俺らは常に同じ奴らとつるんでるねん。

 

 

Black rims on these black wheels, in this black whip

車、ホイール、その周り、全部が黒よ。

 

 

With this black bitch, I’m so black on black on black on black on

黒人の女の子と楽しむ、俺らはそんな感じよ。

Buddy
Buddy

[Verse 2]

 

I feel like Trayvon with this black hoodie on

俺はトレイボン・マーティンのように黒のフードを被るで。

Macaca
Macaca

2012年に起きたTrayvon Martin射殺事件を描写。事件当日、コンビニから帰る途中だった18歳の男の子Trayvon君はパーカーのフードを被って街を歩いていました。それが怪しく思われたのか、その地域のヒスパニック系アメリカ人の自警団員に追跡され、取っ組み合いの喧嘩になり、射殺にまで至ったという事件です。[事件の詳細は後述]

 

 

Huey P. Newton, Black revolution

ヒューイ・ P・ニュートンは黒人の革命家よ。

Macaca
Macaca

Huey P. Newtonは公民権運動の指導者の一人。Bobby Seale[ボビー・シール]と共にブラックパンサー党を結成しました。キング牧師の暗殺や黒人コミュニティを脅かす差別的な価値観を持つ白人警察、麻薬カルテルからGhettoの子供達、家族を守るために地域活動をしていましたが、1989年に麻薬の売人によって射殺されてしまいました。享年24。その犯人に残したとされる言葉が「俺が死んでも、俺の魂は永遠に生き続けるだろう。」

 

 

I’m with a Nubian Queen and some illegal aliens

俺はBlack Woman、それに何人かの不法移民らと共に過ごしてるねん。

 

 

I got a black fist balled up and it ain’t just me, it’s all us

黒い拳を突き上げたんねんよ。俺だけやないで、みんな一丸となってな。

 

 

Four hundred years of oppression

虐げられてきたこの400年間。

 

 

I’m about to get me that black Tesla

俺は黒いテスラを手に入れようとしている。

 

 

Black skid marks on the pavement

舗道の上にタイヤ痕、残したんねん。

 

 

Cops wanna see me in a black cage

おまわりは黒い檻の中に入った俺を見たいねんやろ。

 

 

Black on black on black

劣勢、解放運動、それからアフリカンであることの誇り。

 

 

Master Juba with the tap dance

マスター・ジュバとタップダンス。

Macaca
Macaca

Master Jubaは1840年代に活躍したダンサー。白人が黒塗り(Black Face)をして黒人の真似をする、いわゆる差別を含んだ物真似(ミンストレル・ショー)で黒人の日常生活を滑稽に表現して嘲笑うといったエンタメが流行しました。初期は白人だけが表舞台に立っていましたが、興行収入が目減りし始めると黒人も舞台に上がる事が増えます。その内の一人がMaster Juba。タップダンス自体は1920年〜30年にかて流行しましたが、彼らのような黒人ダンサーによってタップダンスは生み出されました。

 

 

Gucci with the Dapper Dan

Gucciを着たダッパー・ダン

Macaca
Macaca

Dapper DanはNYのファッションデザイナー及び仕立て屋。80年代、90年代に様々なハイブランドをサンプリングしてブートレグ(海賊版)を作っていたことで有名です。ただ単に模倣するのではなく、大胆かつ斬新なNYのストリート・カルチャーを添加する事によって、ハイブランドが買えない層から絶大な指示を受けていましたが、1992年にハイブランド側から訴えられてしまい、店をたたみました。しかし2017年にGucciの広告モデルとして起用されたことをきっかけに、再びアパレル業界に戻ってきました。[詳細は後述]

 

 

Tell ‘em kiss my black ass

奴らに消え失せろって言ってやりたいね。

Macaca
Macaca

恐らくBuddyは白人に対して黒人をええように扱うな、と示唆しているのだと思います。もしくは、Master JubaやDapper Danに対して、白人に媚を売るな、と伝えているのかどちらかです。ネイション・オブ・イスラムの思想で白人社会との決別(白人との混交を避ける、アフリカ回帰)というのがあり、それを踏まえた上でHookのBlack On Blackを聴くと、後者の可能性が高いです。

 

 

Ridin’ on the dyno with black mags

俺は黒いマグネシウム(軽量化)ホイールDyno Type(The Cool kids/Black MagsのMVに出てくる)のチャリンコにまたがる。

The Cool Kids – "Black Mags" (Official Music Video)

[The Cool KidsのBlack MagのHookから引用。]

 

Pedal down the foot hils,wheelies on the front (Yep, uh) P-P-Pedal down the foot hills, wheelies on the front (Yep) I’m on the Dyno eit the black mag, black mag (Word?)

 

ペダル下ろしてウィリーしたんねん。Black MagのDynoに乗ってやな。

 

 

Just another black man tryin’ stay up out the casket

大体の黒人は棺桶から出ようとするで。(=しぶとい)

 

 

Yeah, black don’t crack

せやから薬物なんかやらへんよ。(=生きようとする)

 

 

Matter fact, where the fuck our forty acres at?

実際問題、俺らの40エーカーの土地は何処やねんって話やな。

Macaca
Macaca

40 acres and a mule40エーカーとラバ一頭)という言葉があります。これは南北戦争が終結する前に、エイブラハム・リンカーン大統領がアメリカ南部の解放奴隷に対して、40エイカーの土地(東京ドーム約3個半分)とラバ一頭を保証すると宣言したものです。しかし、南北戦争終結後、リンカーンは暗殺されてしまいました。大統領がアンドリュー・ジョンソンに変わったところで、この約束はないものとされてしまいます。なので、今では「破られた約束」の代名詞として、多くのアフリカンアメリカンの著名人に引用されています。

 

 

We black on black on black on black on black

俺らは虐げられた状況から這い上がって成り上がる人種なんよ。

Buddy
Buddy

[Hook]

 

Black, black, black, black on black

俺らは黒人やさかいな。

 

 

Black, my thoughts so black

めちゃめちゃアフリカンなアイデンティティを持ってるで。

 

 

Black, black, I’m black

そうよ、俺は黒人よ。

 

 

My skin is so black, I’m rockin’ that black on black, it’s black

俺の肌は黒い、せやから俺は同じ奴らと楽しむねん。

 

 

Black rims on these black wheels, in this black whip

黒の車に乗ってやな、黒いホイール、それにそのヘリまで黒いがな。

 

 

With this black bitch, I’m so black on black on black on black on

ほんで黒人の女の子と一緒に居てるんよ。

 

 

Black, black, black, black on black

黒人には黒人よ。

 

 

Black, my thoughts so black

それが俺の考えやねん。

 

 

Black, black, I’m black

俺らは黒人やねん。

 

 

My skin is so black, I’m rockin’ all black, everything is black

分かるやろ?俺らは常に同じ奴らとつるんでるねん。

 

 

Black rims on these black wheels, in this black whip

車、ホイール、その周り、全部が黒よ。

 

 

With this black bitch, I’m so black on black on black on black on

黒人の女の子と楽しむ、俺らはそんな感じよ。

A$AP Ferg
A$AP Ferg

[Verse 3]

 

This kid black, Timbs black, kill track like I’m six black (Black ass nigga)

黒人の子供に黒色のティンバーブーツ。「The Black Six」のように殺す勢いの曲やないか。(もしくはアトランタのアーティスト6lackのようにイカした曲やな。)

Macaca
Macaca

「The Black Six」は1974年に公開された、黒人悪党バイク乗り6人組みが主役の映画。白人至上主義を掲げるバイク乗りに仲間が殺されたことから復讐に挑むという内容だそうです。

 

 

Hair blacker than black, lips black, even my dick black

黒髪に黒色の唇、おちんちんまで真っ黒よ。

 

 

Grandad Irish, Trinidad, guess I am half (Black ass nigga)

俺のおじいはアイリッシュであり、トリニダード人。多分俺はハーフなんやろう。

 

 

I gotta go to Ancestry.com, I think I’m ‘bout to black

俺は自分が黒人や思てるけど、祖先にいちいち確認しなあかんのかいね。(=肌の色をいちいち気にせなあかんのか?)

 

 

All the police ain’t about the black

おまわりさんの大半は黒人ではないやろ。

 

 

He still a pig even though he black

一部のおまわりは黒人やけども、あんたらはまだ豚みたいな考え方しとるんかいな。

 

 

Willie got lynch, head in that

ウィリーの説いたリンチをお前にぶちくらわしたろかい。

Macaca
Macaca

リンチとは私刑。法律に基づかずに私的な制裁を加えることです。語源としては諸説ですが、1775年〜1783年に起きたアメリカ独立戦争がきっかけだそうです。これはアメリカとイギリスの間で勃発した戦争。アメリカ大陸に築いたイギリス植民地の権限を両国が奪い合いました。その際にイギリス植民地の核になっていたバージニア州では、アメリカ独立派の有力者であるチャールズ・リンチ大佐によって、独立に協力しない者、または奴隷による反乱に対して集団的に制裁を加えられていたことからリンチと呼ばれるようになったそうです。また、この違法行為を容認していたのがウィリアムリンチ裁判官という人物で、この人がこの「リンチ」の概念をアメリカの有力者達に広めたのでした。[詳細は後ほど解説します。]

 

 

If you black you dead in that

もしお前が黒人やって殺されてみいや。

 

 

Strange fruit hang from a tree

奇妙な果実が木に垂れ下がってるわって話になるよ。

Macaca
Macaca

Strange fruitとはリンチにされて虐殺された挙句、木に吊るされた黒人の死体の意味。1930年に二人の黒人男性が木に吊るされている写真を新聞社が取り扱った事をきっかけに、それを見た詩人で作曲家であるLewis Allan[ルイス・アレン]が「Bitter Fruit:悲惨な果実」という詩を書きました。それを元に、ジャズ・シンガーのBillie Holiday[ビリー・ホリデー]がルイス・アレンのプロデュースのもと「Strange Fruit:奇妙な果実」をリリースし、この言葉が多くの人に知れ渡ったみたいです。

Billie Holiday – "Strange Fruit" Live 1959 [Reelin' In The Years Archives]

[歌詞一部抜粋]

 

Southern trees bear strange fruit,
Blood on the leaves and blood at the root,
Black bodies swinging in the southern breeze,
Strange fruit hanging from the poplar trees

 

南部の木々には奇妙な実がなるんよ。血が葉を伝って、根っこに滴る。黒い体は南部の風に揺れる。奇妙な果実がポプラの木に垂れ下がってるわ。

 

 

On the leaves is red and that

葉っぱが赤く染まる。

 

 

Do it right like a Garveyite

マーカス・ガーヴェイを指示している奴らみたいに真っ当にやろうや。

Macaca
Macaca

Garveyite(ガーヴィート)とはジャマイカ出身のマーカス・ガーヴェイが説いたアフリカ回帰(Garvinism)の思想、太平洋奴隷制度によって世界に散り散りになった黒人を守るために、国際的なアフリカ共和国を建国しようという考えを指示する層のこと。Garvinismはラスタファリアニズムの基盤となった思想です。

 

 

Africa, I’m heading back

アフリカに俺は帰るでな。

 

 

Niggas in the street, black on black

黒人は路上暮らし。その数は多いで。

 

 

Kill him with the heat (Bah, bah, bah, bah)

暑さで彼らは死んでいく。ふざけんなよ。

 

 

Cut off his feet (Put him in the shackles)

足がちょん切られる。(あいつを縛りあげろ)つってやな。

Macaca
Macaca

1976年に出版された、アフリカからアメリカに奴隷として連れてこられた家系を題材にした小説、The Roots: The saga of an American Familyから引用。この映画は実話をもとにしており、主人公のKunta Kinte(当時18歳)は奴隷商人に拉致されてアメリカの奴隷主に売られてしまいます。Kuntaは4度の逃走を図りましたが全て失敗に終わり、最後に捕まった時に体を縛られて、奴隷主に自分のおちんちんを犠牲にするか、右足を犠牲にするかを問われ、Kuntaは右足を選択しました。

 

 

Mansa Musa been had the cash

マンサ・ムーサはようさん金を持ってたやろ。(黒人の王を主張)

Macaca
Macaca

Mansa Musaは14世紀前半のマリ帝国の9代目の王。(マリは西アフリカに位置するイスラム圏の国)生前の総資産額は約35兆円。金持ちならではの有名な武勇伝があります。彼はムスリム(イスラム教徒)でしたので、メッカ巡礼(サウジアラビア)に訪れていました。その帰途、エジプトのカイロで大量の金をばら撒いて、人々の救済をした国王として知られています。しかし、それよって、金の価格が大幅に下落し、10年以上、インフレの状態が続いたそうです。金を頂けなかった人にとっては苦い10年です。

 

 

Mix blacks to dilute blacks

混血の黒人に薄めの黒人

 

 

Don’t want blacks to produce blacks

黒人の子供やからってあかんことないやろ。

 

 

Take black and they boot that

黒人は搾取される、せやから、彼らは罪を犯す。

Macaca
Macaca

[bootの意味]

 

1つはbootleg(海賊版)から密造、密輸、密売などを表す。語源を辿れば、密造酒を入れたスキットル(平べったい水筒)を靴(boot)と足(leg)の間に忍ばせる事から罪を隠す=犯罪者

 

2つ目は海兵隊などの軍隊で用いられるboot=新人という意味のスラング。そこから新入り=刑務所に入るという意味も考えられる。

 

 

Orange is the new black

囚人服が流行ってますわ。

Macaca
Macaca

2013年にNetflixで公開された「Orange is the new black」、女性刑務所を題材にしたアメリカのドラマから。New blackは流行りという意味。オレンジの囚人服は新人である事から、「色で判断=差別」されるということも暗示している。

Buddy
Buddy

[Hook]

 

Black, black, black, black on black

俺らは黒人やさかいな。

 

 

Black, my thoughts so black

めちゃめちゃアフリカンなアイデンティティを持ってるで。

 

 

Black, black, I’m black

そうよ、俺は黒人よ。

 

 

My skin is so black, I’m rockin’ that black on black, it’s black

俺の肌は黒い、せやから俺は同じ奴らと楽しむねん。

 

 

Black rims on these black wheels, in this black whip

黒の車に乗ってやな、黒いホイール、それにそのヘリまで黒いがな。

 

 

With this black bitch, I’m so black on black on black on black on

ほんで黒人の女の子と一緒に居てるんよ。

 

 

Black, black, black, black on black

黒人には黒人よ。

 

 

Black, my thoughts so black

それが俺の考えやねん。

 

 

Black, black, I’m black

俺らは黒人やねん。

 

 

My skin is so black, I’m rockin’ all black, everything is black

分かるやろ?俺らは常に同じ奴らとつるんでるねん。

 

 

Black rims on these black wheels, in this black whip

車、ホイール、その周り、全部が黒よ。

 

 

With this black bitch, I’m so black on black on black on black on

黒人の女の子と楽しむ、俺らはそんな感じよ。

Nation Of Islam (NOI)/ネイション・オブ・イスラム

Wikipediaより引用

JUSTICE/EQUALITY/FREEDOM/ISLAM
正義、平等、自由、イスラム

ネイション・オブ・イスラム(NOI)はイスラム教をもとに全米で広がった新興宗教ですが、正式に言うと本家イスラム教では一派としては認められていません。

理由は黒人至上主義だから。

本家のイスラム教では国籍、血筋に関係無く、全ての人に信仰が開かれています。

また、本家ではアダム(アダムとイブから:神が最初に創造した人間が最初の預言者であるとされています。

そこからいろんな宗教が生まれたんだよとコーラン(イスラム教の神の啓示、教え)に書かれています。

一方、NOIではアダムとイブが創造される前に黒人が創造されたと説きます。

本家のイスラム教ではコーラン(神の啓示、教え)を認めないとムスリム(イスラム教徒)にはなれないので、NOIは一派として認められないということですね。

 

このような思想に至ったのも、白人至上主義に対抗するため、というか白人が黒人から奪った文化、思想を取り戻すために黒人に誇りを持ってもらおうと、ティモシー・ドリューという人がこの教えを説いたのがきっかけだったんですね。

なぜなら、イスラム信仰があった北アフリカの地域から、奴隷としてアメリカ大陸に連れてこられた黒人は、奴隷主に強制的にキリスト教に改宗させられたという歴史があるからです。

 

そのため黒人は白人のことを悪魔と呼びますし、キリスト教を奴隷の宗教だと呼ぶことにも納得ができます。

もちろん、売りに出されたアメリカの地域や奴隷主の家庭事情、扱いなどによっては大きく考え方は異なるでしょうが、従属的な立場であったことは間違いありませんよね。

 

そのことから、NOIが説いたのが、白人社会との決別

あなた達とは反りが合わないから、別々で暮らしましょう。

アフリカで新しい生活を送るので支援、または私たちから奪った土地などを返してください。

私たちの全てを奪った奴隷主の子孫にはこの責務があります。

不利な状況だから黒人達は犯罪を犯し、刑務所に入るのです。

そして、束縛するように警察は黒人の罪を暴こうとして、痛めつけるのです。

もう一緒の社会で生活するのはやめましょう。

今まで奪ってきたものを返してください。

 

本筋はここにあると思います。

ちなみに、NOIの創始者はウォーレス・ファードというアフガニスタン出身の行商人で、彼がデトロイトでこの信仰を始めました。

 

今回のBuddyのLyricに出てきたMillion Man MarchもNOIによって行なわれている人種差別反対運動の1つです。

元々、黒人男性による100万人大行進デモだったのですが、近年では女性、子供も参加が可能になっているみたいですね。

#JusticeOrElse=正義を持たんかい。

Snoop Dogg Million Man March #JusticeOrElse

トレイボーン・マーティン射殺事件

2012年にフロリダ州で起こった殺害事件。

17歳の黒人の高校生、トレイボーン・マーティン君がヒスパニック系アメリカ人の自警団員、ジョージ・ジマーマンによって射殺されました。

事件の当日、トレイボーンは父親と共に、父親の彼女(父親はトレーボーンの母親とは離婚)の住んでいる街、フロリダ州のサンフォードに訪れていました。

この地区は盗難、窃盗、強盗などの犯罪が多発している区域。

そのため自衛居住区となっており、自警団員が見廻るような治安の悪い場所でもありました。

そんな最中、マーティン君はその地区内のコンビニで買い物を終え、帰途につきます。

彼は彼女に電話をかけ、お喋りしながら帰宅することにしました。

小雨が降っていたのでマーティンはパーカーのフードを被ります。(後に彼女の証言によると、知らない車が着いてくるのでフードを被ったとも言われています。)

そして、履き違えた正義感、あるいは偏執狂めいた自警団員のジマーマンが尾行をし始めます。

ジマーマンは警察に通報の連絡を入れました。

「黒人が歩いてる。怪しい。」

オペレーターは今すぐそっちに向かうから追跡しないでくれと念を押していたそうですが、ジマーマンは電話を切るや否や、マーティンと取っ組み合いの喧嘩になり、銃を取り出した挙げ句、発砲にまで至ったということです。

 

ジマーマンは逮捕され、判決の日がやってきました。

しかし、結果はなんと無罪。

アメリカ南部の特殊な法律の正当防衛法(身の危険を感じたら相手を殺しても良い。通称、スタンド・ユア・グラウンド法)によって保釈されてしまいました。

この判決は当然の如く、アフリカンアメリカンのコミュニティを軸に全米各地で取り沙汰され、#BlackLivesMatter『黒人の命を軽視するな』の抗議運動を起こすきっかけとなりました。

さらに考えられない事ですが、保釈されたジマーマンはマーティンを殺害した時に使用した拳銃をオークションにかけるという非人道的な行動も取ります。

それが20万ドルもの価格で出品されていたことから、彼と同じように命を重んじない差別主義者がアメリカでは一定数存在しているのが如実になりました。

犯罪多発地区(歴史的に奴隷文化が根強く残ってしまっている地区や貧困層)でのこのような正当防衛法は、銃社会が産んでしまった象徴的な処置の1つなのでしょうが、銃制度自体を廃止するのは可能なのでしょうか?

 

オバマ政権下の軍隊がミシガン州フリント市の街で、事前予告も無く一般市民を米軍の実戦練習の標的としたことや、トランプ大統領のあからさまな人種差別発言や白人至上主義を煽るような立ち振る舞いが有る限り、憎悪まみれの世界になっていくでしょう。

キング牧師の「許すことが出来ん奴らは愛することも出来ひん」という言葉は泡沫の様に儚いものなのでしょうか?

“MAKE AMERICA GREAT AGAIN” がさらに溝を深めていることは間違いないです。

ジマーマンは銃をオークションにかけたことに対して、「自分の持ち物をどうするのも自分の自由だ」と答えており、自ら犯した殺害を度外視しています。

自由の女神はジマーマンの事をどう思っているのでしょうか。

Dapper Dan

若干、Buddyに揶揄され気味であった(僕の間違った解釈なら失礼ですが)ダッパー・ダンはNYハーレム出身のファッションデザイナー及び仕立て屋さんです。

Old Schoolのファッションアイコンとして有名ですね。

80、90年代初頭のいなたさを兼ね備えたド派手なトップスとぶっといゴールドチェーンを想像してみてください。

あれがDapper Dan Styleです。

Hip Hop黎明期を支えた人物と言いますか、 一翼を担う、縁の下の力持ちの様にRapper達のブランディングやトレンドを築き上げてきました。

Dapper Dan: Forever Fresh | Mass Appeal

The Fat Boys、LL Cool J、Salt-N-Pepa、Eric B & Rakim、Big Daddy Kane、The Notorious B.I.G.、Kool G Rap、Puff DaddyあとはMike Tysonなどが愛用していました。

ブートレグ(海賊版)として出品していたのがGucci、Louis Vuitton、Fendi等のハイブランド、Polo Ralph Lauren、Leeのアメカジ系、それからNike、Champion等のスポーツブランド。

Dapper Danは1982年〜92年までハーレムで自身のブティックを構えていましたが、1992年に本家のハイブランドから訴えられ、店は閉店。

しかし、25年の年月が経ち、なんと2017年にGucciが過去にDapper Danがデザインしたブートレグを逆サンプリングして限定販売したんですね。

これを機にGucciはDapper Danを広告モデルとして起用。

さらに両者はその後もコラボをしつつ、Dapper Danはハーレムに自身のブティックを再び構えることができたんですね。

Gucci x Dapper Dan made in Harlem A:W '18-‘19 BTS for Numero Homme magazine (Day 1Part 1)

Willie Lynch letter: The Making of a Slave: 1712

さて、最後はA$AP FergのLyricsで登場したWillie Lynch(ウィリー・リンチ)についてお話しします。

衝撃的なサブタイトルですが、“The Making of a Save=奴隷の作り方”

過激な暴力(殺害やら見せしめ)を容認していた悪しき時代のノウハウを英文で記した文脈が他サイトにあったので訳してみました。

まず、この著者ウィリーはイギリス出身の白人の奴隷商人。

主に西インドの奴隷を扱っており、奴隷主というよりは彼らの指導を行うような立場で、奴隷商売に長けていた人物だったんですね。

一足先にヨーロッパではそういった奴隷を扱う商売が流行していたわけですが、そのノウハウを欲していたのがアメリカの奴隷主や政府。

それを伝授するべく、ウィリーはアメリカ・ヴァージニア州に渡ったそうです。

彼の思想としては、奴隷に精神的な恐怖を与え、反発できない状態にさせる

Fergの節で出てきた「Strange Fruit」もその一例です。

木に吊るされた黒人の死体を見せ物にして、奴隷主が思っている様な悪事を働いてはならないという思想を視覚的に植え付けるわけですね。

 

ウィリーは米国の奴隷主や政府、軍隊、知識人に対して「労力を担っている奴隷達に作物や畑(お金や事業)を燃やされてしまっては本末転倒。正しく調教なさい。」と教えたそうです。 

具体的には、奴隷はグループとしていくつかに分けられ、業績や素行が悪いグループには見せしめとして体罰を与えて、その光景を別グループに見させる。

自分たちは同じ目に遭いたくないという思いから、奴隷主に忠実になる。

さらに、個々の知能、働きぶり、誠実さなどのデータを取り、グループの再編成を定期的に行い、繰り返し様子を窺うみたいです。

その状態が続くと、奴隷は奴隷主に対して必然的に依存し、他のグループよりも認められるように尽力するようになるそうです。

 

人間の心理を利用した、いやらしい戦略ですが、ずっとこの様な環境で育っているのであれば、尚更、気づくこともないのかもしれません。

会社の雇用形態や学校、地域コミュニティにも通ずるところがあると思います。

体罰が当たり前だった時代や、パワハラが横行している会社、いじめのある学校、その時折の環境にはリンチ論の様に心理的な構図が働いているのかもしれません。

 

さて、今回は非常に長めの和訳と解説になりましたが、個人的に色々と学べたので記事にして良かったです。

今後も定期的にブラックミュージックやアフリカンの文化を深く掘り下げていきますので、よろしくお願いします。

ここまで読んで頂き有難うございました。

それでは、SAYONARA!BYE!

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